意外に侮れない「便秘」概要
昨今の超高齢化社会において「便秘症」患者さんは増加の一途をたどっています。不十分な治療では死に至るケースもあり、注意が必要です。
また、消化器内科などの非専門医が診察にあたることが多く、様々な問題を散見します。例えば、「精神科疾患」で使用される「向精神薬」は便秘が副作用ですが、なかなか相談できなかったり、わざわざ受診するほどでもないと考えられがちです。
今回はそんな便秘における諸問題を、ガイドラインに沿ってご説明します。
「慢性便秘症」とは?
まず「便秘」の定義は「本来体外に出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされています。なんとなく想像がつきますよね。一方、「慢性」の定義は「6ヵ月以上前から症状があり、最近3ヵ月は診断基準を満たしている場合」です。
思いのほか長く感じる方も多いのではないでしょうか?本音で言えばもう少し早く受診してもらいたいところですが、少なくとも定義通りの患者さんは、これくらい長く悩まれています。
慢性便秘症の罹患率は2~27%ですが、これは症状が出始めてから医療機関を受診するまでにこれだけムラがあるということなのでしょう。
前置きが長くなりましたが、皆さんが一番気にされている治療のご説明に進みます。
慢性便秘症を治癒するには?
基本の治癒は「緩下剤(便を柔らかくする)+刺激性下剤(お腹を動かす薬)の頓用」です。頓用によって1日でばっちり改善する方はあまり拝見しません。長い時間をかけて自分に合った治療薬とその分量を、医師とともに探していく共同作業になります。治療薬・治療方法は多岐にわたるので、キットご自身にあった治療方が見つかるはずです。
最後に治療を一覧表にまとめていますので是非参考にしてみてください。
治療薬 | 有用性・有効性 | 推奨度(1>2) | エビデンスレベル(A>D) |
上皮機能変容薬 | 腸管上皮に水分を引き込み、便通を改善する機序。一般的に有用であり、推奨度は高め。ただし女性(特に妊婦)に対しては副作用の懸念がある。 例:アミティーザ、リンゼスなど | 1 | A |
浸透圧性下剤 | 古くからある緩下剤であり、有用性・安全性が確立している。 例:酸化マグネシウムなど | 1 | A |
消化管運動賦活薬 | 有効性は示されているものの、日本で使用可能なものでのエビデンスは少ない。 現場ではよく使われている。 例:プリンペラン、ナウゼリンなど | 2 | A |
刺激性下剤 | 有効性は示されているが、頓用または短期間での使用が望ましい。 例:プルゼニド、アローゼン、ラキソベロン | 2 | B |
プロバイオティクス (腸活) | 有用性あり。いわゆる善玉菌の日常的摂取による腸内細菌叢の安定化を図る。 | 2 | B |
膨張性下剤 | 主に「過敏性腸症候群(便秘型):IBS」の患者さんに対して使用。 例:コロネル、ポリフルなど | 2 | C |
漢方薬 | 下剤として有用な漢方薬も存在する。 ケースバイケースで使用。 例:大建中湯 | 2 | C |
【このコラムの執筆者】
医師 佐々木 哲三(ささき てつぞう)
消化器内科/一般内科。日本内科学会、日本消化器病学会、日本内視鏡学会、東京都在宅医療塾1期生、医療法人恵容会 南大沢クリニック(副院長)、ささき医院(副院長)に所属しています。