睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠中に呼吸(口や鼻の空気の流れ)が10秒以上停止する状態のことを睡眠時無呼吸といいます。ほとんどの場合、いびきを伴い、1時間あたり5回以上無呼吸や低呼吸が発生。そのために熟眠できず、日中など起きている時間に異常な眠気を催す状態を「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」といいます。
脳、神経、心臓の病気が原因で起こるタイプを”中枢型”、のどが閉じてしまうことで起こるタイプを”閉塞型”、両者が混合して起こるタイプを”混合型”と呼んでいます。中でも最も多いタイプが閉塞型。肥満と強い関連がありますが、肥満でない場合も起こる可能性があります。
なぜ発生するのか?
いびきや無呼吸が起こる原因について、最も一般的な「閉塞型」というタイプを用いて説明しましょう。通常、人は仰向けになって眠りについた際、鼻や口から吸い込んだ空気がスムーズに喉を通過し、気管や肺へと流れ込みます。しかし、肥満などの理由で睡眠時に喉が狭まると、空気が通過する際に抵抗が生じ、「いびき」の原因となります。さらに完全に閉塞してしまうと、無呼吸状態に。閉塞型の無呼吸では、呼吸しようとする「呼吸努力」が胸部や腹部で観察されることが特徴です。
扁桃腺が大きいために同様の現象が起きることもあります。中枢型と呼ばれるタイプでは、脳、神経、心臓の疾患のために筋肉の動きも含めて呼吸そのものが停止することが原因で起こり、呼吸努力はみられません。混合型では、閉塞型と中枢型の両方の原因が認められます。
(参照:千葉大学大学院医学研究院より引用)
潜在患者数は多いが、治療を受けている方は少ない現状
日本国内における睡眠時無呼吸症候群の潜在患者数は約500万人(有病率:男性約9%、女性約3%)と推定され、その内、医療機関での治療(CPAP治療)を受けている方は、50万人程度に過ぎません。
こんな症状はございませんか?
・日中の眠気
・いびきがうるさいと言われたことがある
・よく寝れた気がしない
・日中に眠気がある。
・起床時の頭痛
心当たりのある方は、ぜひ下の簡易チェックを試してみてください。合計点数が3点以上の方は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性が高いです。
睡眠時無呼吸簡易チェックリスト
このテストでは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクを簡単に評価します。
SASの特徴に「日中の眠気」を感じたり、「居眠り」をしてしまう事があります。
質問 | 点数 |
✓しょっちゅう(常習的に)いびきをかく | 1.5 |
✓肥満傾向がある | 1.5 |
✓高血圧がある | 1.5 |
✓昼間の眠気・居眠りで困ることがある | 1.5 |
✓寝つきは悪くないが、夜間の眠りが浅い、眼が覚める | 1.0 |
✓寝ても朝疲れが取れない感じがする | 1.0 |
✓お酒を飲んでいない日でも、寝ている時に息が止まることがある | 3.0 |
(東京医科大学睡眠講座/井上雄一)
睡眠時無呼吸症候群はどうして問題か?
睡眠時無呼吸症候群は、日常生活と健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
1) 日常生活への影響
日中の眠気:日常活動や仕事中の集中力を低下させ、居眠りを引き起こすことがあります。
運転と安全性:特に運転中の眠気は交通事故のリスクを高めます。実際に睡眠時無呼吸症候群が交通事故や鉄道のオーバーランなどの原因となった事例が報告されています。
その他の影響:抑うつ症状、不眠、勃起障害などの原因となり、日常生活や性生活にも悪影響を与えます。
2) 合併疾患のリスク
心血管疾患:睡眠時無呼吸症候群は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。
代謝疾患の悪化:糖尿病の悪化、高血圧、不整脈などの原因となることがあります。
突然死のリスク:この病気は未治療の場合、突然死のリスクを高める可能性があります。
そのため、睡眠時無呼吸症候群の正確な診断と積極的な治療が重要です。この症状は日常生活の質を下げるだけでなく、重大な健康リスクをもたらす可能性があるため、注意が必要です。
*1 長谷川敏彦:日本臨床64巻増刊号6.357-362.2006: 国民健康・栄養調査H26年有病者数
*2 肥満:Keefe, Patterson.Obes.Surgery 2004:メタボリック:Nishimura et. al J. Cardiol, 2015;
*2 糖尿病:Einhorn et al., Endocrine Prac, 2007. すべての高血圧:Nishimura et.al J. Cardiol, 2015;
睡眠時無呼吸症候群の検査・診断方法について
睡眠時無呼吸症候群の診断は、睡眠中の無呼吸や低呼吸の存在を確認し、体内の低酸素状態を証明することによって行われます。また、症状の重症度や、それが中枢型、閉塞型、混合型のいずれであるかを明らかにすることも診断には欠かせません。これにより、適切な治療法を決定することができます。
診断プロセスは通常、二段階で進められます。まず簡易検査を行い、その結果が陽性であれば、より詳細な精密検査に進みます。日中の睡魔が必ずしも睡眠時無呼吸症候群に起因するとは限らないため、他の健康問題の可能性も含めて慎重に検査する必要があります。
1) 簡易検査
簡易検査は、指先に体内の酸素飽和度を測定する機器を装着し、腕に小型の機器をはめて一晩休んでいただきます。ご自宅で検査が可能です。また操作も簡便で、装着後、ご自分でスイッチを入れ、翌朝、スイッチを切って、検査メーカーに郵送していただくだけです。結果は2週間程度で判明します。
2) 精密検査=ポリソムノグラフィー(PSG)
簡易検査で陽性と判定された方は、精密検査を行います。この検査はポリソムノグラフィーと呼ばれ、指先の器械だけではなく、心電図や脳波、鼻や口の気流測定、腹部の動きなどを見るセンサーを装着し、一晩寝ていただいて検査します。
出典:ZONE株式会社より引用
検査は自宅・入院の選択が可能で、当院では負担が少なく日頃の生活に近い自宅検査をオススメしています。
当院では、自宅検査が出来る仕組みを整えていますので、症状があり気になる方はぜひご相談ください。
参考情報
日本呼吸器学会 – 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
厚生労働省 – e-ヘルスネット(睡眠時無呼吸症候群 / SAS)