以前、厚生労働省が睡眠ガイド2023という指針を公開したのをご存知でしょうか?
これまでも同様のガイドは掲載されていましたが、10年ぶりに更新されました。日本の多くの方が睡眠に課題を感じている時勢を踏まえて、更新されたものと思われます。近年、睡眠に関する書籍やメディア紹介の機会も増え、関心が高まってきていることがうかがえます。
今回は、この睡眠ガイド2023の内容について少しご紹介します。
前回との大きな違いは、適正な睡眠時間と睡眠休養感の確保に向けた推奨事項を「こども」「成人」「高齢者」と年代別にとりまとめた点です。また、良い睡眠には光・温度・音等の環境因子や、食生活・運動等の生活習慣、睡眠に影響を与える嗜好品との付き合い方なども重要であり、科学的知見を踏まえながら、これらについての留意点をまとめている点も興味深いです。
他にも「睡眠障害」や、女性ホルモンの変動が睡眠に及ぼす影響、また夜勤を伴う交替制勤務による睡眠の不調において工夫できる点等も含めて整理されており、現代生活の中でどう睡眠と向き合えば良いかがまとめられています。
睡眠は健康を保つために大切です。十分な睡眠を取ることで、病気のリスク減少や寿命の延長につながります。睡眠時間は個人差があり、ライフステージによっても異なります。このガイドで説明されているステージごとの睡眠の推奨事項を下記に掲載します。生活習慣や環境を見直し、適切な睡眠を確保することが重要です。
日々の生活の改善はいきなりは難しいかもしれませんが、ひとつひとつ出来る事を考えて改善していきましょう。改善施策についてお困りな点などございましたら、ぜひ当院にご相談ください。
また、今回のガイドでは良質な睡眠内容についても解説されています。一部ご紹介します。
全体の方向性 | 個人差等を踏まえつつ、日常的に質・量ともに十分な睡眠を確保し、心身の健康を保持する |
成人 | 適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する。食生活や運動などの生活習慣、寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。睡眠の不調・睡眠休養感の低下がある場合は、生活習慣等の改善を図る事が重要であるが、病気が潜んでいる可能性にも留意する。 |
高齢者 | 長い床上時間が健康リスクとなるため、床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保する。食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中は長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす |
こども | 小学生は9−12時間、中学・高校生は8−10時間を参考に睡眠時間を確保する。朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかりとり、日中は運動をして夜更かしの習慣化をさける。 |
良い睡眠を得るためには、どのような対策が必要?
この度、当院がまとめた「睡眠ガイド」には、良質な睡眠を取るための個人的な対策が盛り込まれています。下記も参考にしてみてください。
◇ 睡眠を取りやすい環境作りについて ◇
まず、睡眠を取りやすい環境を作るためには、日中に十分な日光を浴びることが重要です。これは体内時計を整えるために役立ちます。また、寝室はスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして睡眠をとることを推奨します。加えて、就寝の1時間から2時間前に入浴することも効果的です。
◇ 運動と食事などの生活習慣について ◇
運動と食事などの生活習慣では、適度な運動を習慣化し、朝食を摂取し夜食を控えることが有効です。寝る前にはリラックスする時間を設け、無理に眠ろうとしないことも大切です。
◇ 刺激物の摂取量とタイミングについて ◇
刺激物の摂取量とタイミングに関しては、カフェインは1日にコーヒーカップで4杯程度にし、夕方以降は控えることが望ましいです。また、晩酌での深酒はせず、睡眠のためにアルコールを摂取しないこと、ニコチンを含むたばこは控えることが勧められています。
◇ 不規則な交代勤務をしている方へ ◇
交代勤務など、規則正しい生活が難しい方には、眠気や疲労を軽減するために夜勤中の20分から50分の仮眠を推奨しています。また、不眠や睡眠休養感の低下を感じる場合には、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。
その他参考情報
厚生労働省が睡眠の専門家にヒアリングして「今日から使える睡眠トリビア」を公開しています。こちらも参考にしてください。